「 ORIGAMI ドリッパー 」は、おうちコーヒーを始めたい初心者、既にコーヒー器具は何種類も持っているという人まで、お薦めできるおしゃれなコーヒードリッパーだ。もちろん、ドリッパーごとの形状や特性によって、必ずメリットとデメリットが混在する。もし、上級者への境界線があるとすれば、使用するドリッパーの構造を理解して、最大限にコーヒーの味わいを引き出せることだろう。
毎年、老舗から新参メーカーまで、デザインやギミックに趣向を凝らしたコーヒー器具が発売される。そんな新旧揃い踏みのコーヒードリッパーの中で、キッチンウェアとしても完成度が高いのが同ドリッパーだ。発売から数年が経ったいま、すでに目にしたことも多いアイテムだろう。あえて今回は、コーヒーを淹れる機能性以外の、ORIGAMIドリッパーの独特なデザインと手触りにフォーカスしたい。
薄く軽いセラミックボディに作られた20の折り目。
外観は、インテリア向けに作られた陶磁器のよう。コーヒーを美味しく淹れるためのデザインなのだが、この印象的な折り目へたどり着くまでに、どのようなストーリーがあったのだろう。
ORIGAMIドリッパーは薄いボディゆえにとても軽い。一般的に、セラミックタイプのドリッパーはしっかりと重みがあるため、転倒などの事故を防ぐ利点がある。同ドリッパーに関しては、サーバーやマグカップに差し込めるような形状であること。また、別売りの専用ホルダーが用意されているので、軽さによる転倒という問題は解消している。
整えられた手触りは、職人の手仕事。
ORIGAMIドリッパーのボディは、白磁という土を成形し、素焼きという工程を終えるまでに、約3日間かけられる。セラミック製品と聞くと、機械化により人の手をかけず大量生産されるイメージもあるだろう。しかし、繊細な20のひだで作られる折り目は一朝一夕ではない。
まず、鋳込み師という職人が、ドリッパーの型に土を流し込む。次に型から取り出せば、鋳込み成型によって出来るでっぱりを、手やはけでならす。20もあるひだに潰れがないかをチェックして、時には手でも整える。その後、夜から朝方まで乾かせば、細かなバリを取る仕上げ作業が待っている。
成形のチェックを終えれば、半日かけて素焼きされる。焼き上げ後は、もう一度、折り目が潰れていないかのチェック。ここまでくれば、やっと釉薬を塗る最終工程に進むことができる。
全行程、手作業で作られるORIGAMIドリッパーの魅力。
見た目の印象よりも、手にしたときの軽さとしっとりとした手触りが、陶磁器としての秀逸さを感じる。人の手によってひとつずつ丁寧に塗られた釉薬と、20の折り目が作る陰影が美しいコーヒーウェアだ。器具としての性能は、競技会でORIGAMIドリッパーを使用した多数の勝者がいることで折り紙付き。
筆者も、おうちコーヒーにのめり込んでから、コーヒードリッパーを中心に器具を十数種類ほど購入してきた。取材で巡ってきたコーヒーショップ、バリスタたちが交わすコーヒー談義を伝え聞いて得た私感は、「どのようなコーヒードリッパーでも美味しいおうちコーヒーは淹れられる」ということ。
ただ、ORIGAMIドリッパーのように、デザインへの憧れと人の手を介して仕上がるプロダクトは、いくつあっても良いと思わせるだろう。